むらさきのフクロウ伝説

_yamato1-by+ena

イラスト提供:enaさん

フクロウは、その丸く大きい瞳からか、賢い鳥として大事にされることが多い鳥です。日本では宮沢賢治の童話ではフクロウの姿をした仏様が登場したり、魔法 使いの側近として映画にも登場するなど、古今東西、知恵や学問を象徴する鳥として語られることが多いのも、賢いイメージの現れと云えるでしょう。

ギリシャ神話に登場するジュピターには、12人のこどもがいて、この子どもたちはオリュンポス十二神とも呼ばれています。そのうち、ミネルヴァという女神は知 恵や学芸の神とされているのですが、彼女もまた、フクロウを可愛がっておりました。フクロウを自分のトレードマークとしていたくらいですから、ミネルヴァ は常にたくさんのフクロウを身の回りに飼っていましたが、ごくまれに、出来のよろしくないフクロウもおりました。

ある時、そんな不出来なフクロウの子が、ミネルヴァの弟でお百姓さんの神であったバッカスのぶどう畑に入り込み、大きく実ったぶどうの実を残らず平 らげてしまいました。このあたりの土地は石灰分が多く、やせていて、野菜や穀物がなかなか育たないため、バッカスの立派なぶどう畑はとてもめずらし いものだったのです。空っぽになったぶどうの樹を見たバッカスは、たいそう怒り、人の役に立つようになるまで自分の農場で働くようにと、子フクロウ にきつく言いつけました。

子フクロウがぶどう畑の世話を手伝うようになってからというもの、ぶどうの樹はそれまで以上にたくさんの実をつけるようになりました。気を良くしたバッカスは、粒の大きく、房の形の良いぶどうを選んで市場に運ぶようになり、彼のぶどうはますます評判が良くなっていったのです。市場に持って行かれな かったぶどうは、やがては熟れ過ぎて地面に落ちてしまっていましたが、そこで子フクロウは考えました。

「このぶどうを、隣あった村の子どもたちに分けてあげてはどうだろう」

それからというもの、子フクロウはぶどうの樹の皮でつくった樽に畑に残されたぶどうを大切に取っておき、来る日も来る日も隣あった村の子どもたちに届けに いきました。なかなか食べ物が育たず、いつもお腹を空かせていたまわりの村の子どもたちも、子フクロウからの贈り物には大喜び、元気にすくすくと育ってい きました。

暑い日も、寒い日も、子どもたちにぶどうを届け続けた子フクロウは、いつしか身体中が紫色になってしまいましたが、そんなある日、バッカスは、房か ら落ちて樽に残ったぶどうの実が発酵し、お酒になっているのを発見しました。試しに飲んでみるとこれがたいそう美味しく、この新しいお酒はやがて、ぶどう 酒として世界中に広まることになりました。こうして、バッカスはお百姓さんの神に加え、ぶどう酒の神、酔っぱらいの神となり、末永く民衆から愛され る神となったのでした。

そして、隣あった村々では、今でもなお「『むらさきのフクロウ』を見つけた子どもには、幸せが訪れる」と言い伝えられているのです。

 

・・・このお話は、Tomokazu Kikuchiさんが考案してくれたフィクション(一部ノンフィクション)です。